GREEN×EXPO 2027で競われる、次世代ハイブリッド建築の「実装力」
2027年、横浜で国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)が開催されます。
この国際的な舞台において、今、建築界の主戦場となっているのは単なる「植栽の展示」ではありません。大手建設会社(ゼネコン)が自ら資金を投じ、最先端の技術を詰め込んだ「自主出展パビリオン」の木造・木質化競争です。
なぜ彼らは、国や自治体の発注を待たずに「自腹」で木造パビリオンを建てるのか。
そこには、2026年現在の都市開発を見据えた、極めて高度な経営戦略と技術の実験(実証)が隠されています。
1. 「万博」から「園芸博」へ:木造化の思想的パラダイムシフト
記憶に新しい2025年の大阪・関西万博では、巨大な木造リングが象徴として建てられました。しかし、当時の議論の多くは「コスト」や「規模」に終始していた感は否めません。
対する2027年のGREEN×EXPOでは、木造建築の評価基準が「規模の大きさ」から「循環の質」へと完全にシフトしています。
- 短工期・解体前提の設計(DFMA): 博覧会のパビリオンは、数ヶ月で解体される宿命にあります。「いかに早く建て、いかに綺麗に解体し、次の建物へ再利用(リプレイス)するか」。最初からBIMで解体・再組立のプロセスが組み込まれています。
- LCA(ライフサイクルカーボン)の完全証明: 材料の調達、輸送、建設、そして解体・再利用に至るまでの$CO_2$排出量と炭素貯蔵量が、すべてデジタルデータとして可視化され、パビリオンそのものが「環境価値の教科書」として機能します。
2. 自主出展パビリオンに投入される「3大先端技術」
各社が威信をかけて投入する技術は、我々がこれまで連載で扱ってきたテーマの「集大成」と言えます。
① CLTオーバーレイと異種材料の「ハイブリッド構造」
限られた工期の中で大空間を作るため、鉄骨の強靭さとCLTの断熱・意匠性を組み合わせたハイブリッド構造が標準実装されています。特に、工場で鉄骨と木材を一体化させてから現場に搬入する「プレカット・ユニット化」技術は、現場の職人不足を解決する決定打となっています。
② 進化した「耐火・燃え代設計」の一般流通材化
万博クラスの不特定多数が集まる大型空間では、厳しい防火基準が課せられます。ここでも、第5回で解説した「燃え代設計」や、一般流通材(地場産材)を組み合わせた耐火被覆技術がフル活用され、「木のぬくもりを現し(あらわし)にしたまま耐火基準をクリアする」という難題をクリアしています。
③ 竣工前から動く「建物OS(デジタルツイン)」
パビリオンの各部にはセンサーが張り巡らされ、会期中の来場者の動線や、木材の含水率、構造の歪みがリアルタイムでモニターされます。これは、博覧会という過酷な環境をテストベッド(実験場)として、竣工後の維持管理データ(建物OS)を蓄積するための戦略です。
3. ハイブリッドな考察:ゼネコンの狙いは「技術の民主化」の主導権争い

ゼネコンが自主出展する本当の狙いは、単なる企業PRではありません。
パビリオンという「極限状態のプロトタイプ」を成功させることで、「この木造ハイブリッド技術は、明日からの一般のオフィスビルや商業施設にもそのまま使えます」という証明(技術の民主化)をしたいのです。
評価軸従来のパビリオン(特注品)GREEN×EXPO 2027(標準実装モデル)木材調達特殊な大断面集成材一般流通材・CLTの組み合わせ金物連携職人の手加工に頼る特注金物BIMデータ連動による工場プレカット解体後廃棄、または一部のモニュメント化別な建築物(オフィス等)への完全移築
4. 読者(実務者)への提言:2027年を待つな、今すぐ「実装」へ
「これは大手ゼネコンのお祭りだ」と傍観している時間は我々にはありません。
2027年の園芸博で披露される技術は、2026年現在の「今」、まさに開発・検証されているものです。
国や大手が提示する「未来のスタンダード」を先取りし、地域の鉄工所や製材所とアライアンスを組んで、小さな3階建てのビルから実装していくこと。それこそが、次の時代に生き残る建設実務者の道です。
大手が莫大な予算を投じて証明してくれる「木造建築2.0」の果実を、我々のローカルな現場にどう引きずり下ろすか。今からBIMを開き、調達ルートを開拓しておきましょう。
[マガジンTOP:ハイブリッドリゾナンス:都市を森に変える「木×鉄」の実装戦略]
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